「みなさま、

出発地ロンドンは

あいにくの雨でございましたが、

到着地ヴェロナは

ただいま快晴と報告されました。」

ヴェロナ着陸20分前のこの機内アナウンスに

客室から安堵のため息が起こった。

雨続きのロンドンからやっと抜け出したのである。

そうよ

ホリデーはこうでないと!

イタリアのホテル事情

ヴェロナ空港からバスでヴェロナ駅まで向かうこと15分。

ヴェロナ駅から10分でホテルに到着。のはずである。

しかし、ホテルのある場所はビルの行き止まり。

ゴーグルマップではそのビルの反対側がホテルらしい。

しかしどうやって入るかわからない

「ねえ、この場所であってるよね?」

「間違い無いと思うよ。でもどう探しても個人アパートしかない。」

途方に暮れていると、

アパートの住人らしいにいちゃんが、ゴミを出しにビルから出てきた。

よし、このにいちゃんに聞いてみよう。

「あのう、私たち、CASA ITALIAっていうホテル探してるんですけど、」

にいちゃんは、

「あーもしかして、君。げば?」

わたしがうなずくと

「あーよかった。僕、CASA ITALIAのオーナーのルシアーノ。よろしくね。ホテルはここだよ。」

「えっ!」

(普通のビルじゃねえか!)

「入って、入って」

ルシアーノはコードキーでドアを開けてくれた。

よく見ると、小さなプレート「CASA ITALIA」が

他の住人たちのプレートの横に

並べて壁にかかっていた。

このホテルは普通の家族向けアパートを

そのままホテルにしていたのだ。

家族向けアパートなので、3−4ベッドルームある。

そのベッドルームをそのまま「客室」にしていたのだ。

ホテルというか

コンドミニアムである。

もちろん、バス、トイレ、キッチンは共有。

……安いはずだ。

11月の閑散期、しかも月曜日ということで

他の部屋は空っぽだった。

つまりホテル丸ごと、私たちのプライベート空間だったのである。

ルシアーノは観光者用のマップをくれて私たちに説明してくれた。

ジュリエットの家

ロミオの家

カステルヴェッキオ城橋

アレーナ(古代ローマ時代の円形球技場)

エルベ広場

サン・ピエトロ城の丘…… などなど

おお! 結構観光スポットあるじゃん!

ふと目を上げると

ルイーザの目は輝いた

ポルトガル女、なめんなよ

はるか昔、

ポルトガル人は大航海時代に多くの探検家を輩出した民族である。

その冒険心は日本人の比ではない。

「さあ、げば、行くわよ!」

マップを片手にルイーザはヴェロナ観光攻略に意欲満々である。

(着いたばっかだよう!もうすぐお昼だから、のらりくらりカフェでゆっくりして、1、2箇所まわって今日は終わりにしよう。ルイーザはポルトガル人でラテン系だから、せいぜい観光意欲もこの程度だろう。)

なんて思っていたげばは甘かった。

マップ片手にあっちだこっちだと先導するルイーザを唖然と見守る。

「これと、これと、あれ、全部回る!」ルイーザは豪語する。

(何をいってるの、この人?)これがげばの世界観である。

たまりかねてげばは、ルイーザに文句を言った。

「ヘイ、ルー!おばさん疲れたよ。お店に入ってビール飲みたい。」

彼女はげばに同意し店に入った。

ただし、

カフェではなく、普通のコンビニに入ったのである。

そこで飲み物とスナックを買って、

食べながら進んでいる!

もう

これは

「観光」ではない!

「行進」である!

これがげばの(素直な)感想である。

「ねえ、ルー、私さ、ジュリエットの家見たら、あとは行かなくていいよう」

「うん、ジュリエットの家もいくけどさ、その途中に色々あるから、

そこにも寄らなきゃ損じゃない。せっかく来たのに」

(ごもっとも)

ルイーザは軍隊のマーチの如く進み、

目的地に着くと写真を撮りまくる。

そしてまたマーチを始める。

そうやって歩みを進めていくうちに、

観光客がわらわら増え始めていった。

ジュリエットの家に近づいたのだ!

投稿者 geba-

21年の国際結婚にピリオドを打ち、今現在シングルアゲインしています。この生活は思った以上に快適で、NHSの病院で働きながら、漫才みたいな生活を楽しんでいます。女子トーク、イギリス生活、そしてシリアスな人生観を書いていきます。

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