因果応報

2021年、1月。

げば、りんごちゃん、みかんちゃんは家族だけど別々に暮らしている。

りんごちゃんは結婚してロンドンに、

げばはイギリス南部の田舎町に。

みかんちゃんはというと、

こいつがなかなか曲者で。

オーストラリアでバックパック旅行すると言い出した。

大きなリュックサック持ってヒッチハイクで旅をするってやつだ。

この私も何を隠そう、30年前にひとり、イギリスボランティア留学に応募し、

親を泣かせたものだが、ちょうど30年後に、同じ年頃になった娘が

今度は日本と経度が同じオーストラリアに行くという。

因果応報とはよく言ったもので、

あの時の母親と同じ思いを、私もすることになるなんて。

反対なんかできない。(当たり前だ)

彼女は大学を出て数年、私と同居してコツコツ働いていた。

今思えばお金を貯めてたのだ。

みかんちゃんの旅立ち 

どういうふうに旅行するのかと聞いたら、

みかんちゃん「あっちで車買って、オーストラリア中をドライブして回るの?」

げば 「オーストラリアって広いんだよ」

みかんちゃん 「だから2年かけて回るの」

げば「お金持つの?」

みかんちゃん「持つわけないじゃない。」 (頭がクラクラする)

げば 「どうやって生きていくのよ」

みかんちゃん 「現地で働くのよ」

げば 「そんな、すぐに雇ってくれないでしょ」

みかんちゃん 「数ヶ月、働いて、移動して、また働く。」(めまいがしてきた)

みかんちゃんはおとなしい、優しい子だけど、家族一番の頑固者でもある。

言い出したら絶対きかない。

出発の2日前である。

みかんちゃん「ねえ、マミー、旅行保険って入んないといけないの?」

げば 「何!?あんた入ってないの?」

みかんちゃん 「いらないと思って。でも念のために聞いたの」

げば  「ばかもん! いるに決まってるでしょうが!2年もいくのに!」

オーストラリアの生活始まる

なんだかんだあって、

無事に出発した。

そしてすぐに

オーストラリアで

大きな山火事が起こった。

森林が広い範囲で破壊され、世界的ニュースにもなった。(2019年12月)

みかんちゃんは無事だろうか?

毎日ニュースを見て無事を祈るげば。(母親らしいことをしていた)

同じ頃、

地球の裏側、我がイギリスでは

コロナ禍が発生していた。

本当に大変な年。

思えばみかんちゃんがここ(イギリス)にいなかったのは不幸中の幸いだった。

イギリスにコロナの波、第一波が吹き荒れた、2020年、3月、4月、5月。

それはオーストラリアでも同じこと。

用のない旅行は禁止され、そこにいるエリアから出るなとお達しがあった。

彼女は仕事場であるりんご園で隔離されていた。

つまり、りんご園から出るなということ。

りんご園は広い。

大変自由で快適な隔離だったらしい。

イギリスの狭いアパートで隔離されることを思うと、

ずっと幸せだったと本人は言う。

ワニがいるよ!

オーストラリアの冬の季節(イギリスは夏)がやってきた。

りんご園は繁忙期が終わり、季節労働者たちは移動を始める。

冬の間、彼女は街の中で、掃除夫とかの仕事をしていたらしい。

大の掃除嫌いのみかんちゃんが掃除夫!

笑うところではない

彼女だって生きていかなければ

彼女は人の嫌がるような仕事も黙々とこなしていた。

こういうところは私の血を引いている(と思う)

やがて春になり、オーストラリアは急速に暖かくなった。

みかんちゃんは仲間と一緒に滝の流れる清流の池にハイキングに出かける。

水着になって仲間と遊ぶみかんちゃん。

楽しそうにFacebookにその時の写真を掲載する。

そのFacebookを見た瞬間、

私は凍りついた。

なんと

ワニがいるのだ!

ワニが!

水木しげるの回想録

私は昔見た、水木しげるの回想録を思い出していた。

水木しげるというのは有名な「ゲゲゲの鬼太郎」を描いた漫画家である。

彼は戦争中、ラバウルに滞在していた。

ある日、一緒にいた兵士が汚れた服を洗おうと川で洗濯を始めた時、

音もなく近寄ってきた化け物に

その兵士は一瞬で食われてしまったのだ。

その化け物は川に住むワニ。

原住民は川にワニがいることを知っていたので、ワニの嫌う海水が合流するエリアで洗濯をする。

でも来たばかりのよそ者の兵士はそんなこと知らない。

その時、水木はこう思ったという。

あの兵士は多分こう思っただろう。

ワニに命を取られるなんて!

俺はお国のために命を捧げるはずだった。

この命はお国のためにあったのに。

なんでワニなんかに食われなきゃいけないんだ!

あの時私は

ワニに会うと一瞬で食われる。のか

ああそうか かわいそうに

まあ今はワニに遭遇することないから

大丈夫。

とか呑気に思っていた。

親の思い 

娘が和やかに笑っている素晴らしい滝のある清流の写真。

そして恐ろしく大きな口の巨大なワニの写真。

それが隣り合わせになっているFacebookを見て不安でいっぱいになるげば。

何か起こって、

「ああ そうか かわいそうに」

じゃない!

オーストラリアはワニの宝庫。

水のあるところ至る所にワニがいてもおかしくない。

みかんちゃんは、のほほんとしてるから

ああ 考えただけども恐ろしい。

娘にすぐ連絡を取った。

げば 「みかんちゃん! あの清流の写真!

げば 「ワニが! ワニがいるじゃない!あのワニ、野生のワニなの?!」

みかんちゃん 「うん、野生のワニだよ」

げば 「なんてことを!そんな危険なとこ!なんで行ったのよ!」

みかんちゃん 「ああ、あれ?ワニは北部の方にいるから、あそこにはいないんだよ」

オーストラリアって広すぎて全く位置がつかめない。

げば 「お願いだから危険なことしないでよ」

みかんちゃん「大丈夫だって」

私はそれ以上何も言えなかった。

親は心配。

心配してもなにもかわらん。

でも心配。

ああ

私も自分の親にこんな思いをさせてきたんだな。

親の心子知らずとはよく言ったもので。

お父さん、お母さん、ごめんなさい。

心配かけました。

そして今、

その思いがブーメランで帰ってきました。

とにかく みかんちゃん

無事でおってくれと、

祈るばかりです。

投稿者 geba-

21年の国際結婚にピリオドを打ち、今現在シングルアゲインしています。この生活は思った以上に快適で、NHSの病院で働きながら、漫才みたいな生活を楽しんでいます。女子トーク、イギリス生活、そしてシリアスな人生観を書いていきます。

「「親の心子知らず」ブーメラン!」に3件のコメントがあります
  1. 我が家も長男が一人暮らしを始めました。
    どちらかというと家では何もしないタイプだったのに、週末に帰ってくると働きます。
    子供は井戸の外に出て苦労した方が逞しくなるのでしょうね。
    苦労させたくない親の気持ちは、ある意味成長を妨げる要因ですね。
    みかんちゃん逞しくなって帰ってくる、もしやオーストラリアに住み着いて帰ってこない?
    GEBA家は世界中にネットワークを広げるのでしょうね。

    1. ありがとうございます。
      母親としては、たくましくなって帰ってきてほしい。
      という贅沢は言いません。
      とにかく無事に帰ってきてくれたらそれでいいです。
      オーストラリアに住みついても、イギリスに住みついているげばは何も言えません。まさしく「親の心子知らず」ブーメラン現象です。

  2. みなさまへ

    げばおばちゃまのロゴができました。こんな可愛いロゴを作ってくださったのは

    パッチングワーカーさんです。ほんとうにありがとうございました。

    https://keiken.blog/

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