因果応報という言葉がある。

自分が誰かに何かしたら

その報いがブーメランのように

自分に跳ね返ってくることである。

汗っかきの女の子

りんごちゃんは

小さな頃から

汗っかきの子供だった。

特に手のひらに汗をかく。

思えば

彼女は生まれた時、

ぎゅと拳を握りしめていた。

いつもいつも

無意識でこぶしを固く握っていたため

それがいつの間にか

癖のようになったようだ。

別に

彼女が好きなら、

それでもいいか。

お母さんのげばは

ほったらかしにしていた。

先生からの注意

幼稚園に上がった頃、

先生との面談で、

りんごちゃんが文字を書いたら

その紙がいつも湿っている。

と忠告があった。

調べた結果、

彼女の手のひらが汗ばんでいるため

その汗で紙が濡れている、ことが判明した。

医者に相談すると

手のひらの汗腺を少し刺激すれば

治るかもしれない。

でもあまり心配しなくてもいい。

自然に治るでしょう。

と言われた。

やがて思春期を迎えたりんごちゃん。

けれど手のひらの多汗は治らない。

げばから医者の話を聞いた彼女は、

その治療を受けたいと言い出した。

ハンドクリニックに行く

げばに連れられて

ハンドクリニックに行ったりんごちゃん。

優しい看護婦さんが説明する。

水槽にはった水の中に手を入れて、

微量の電気を流す。

それが汗腺を刺激して、

多汗がおさまる。

こういう治療だった。

りんごちゃんは

恐る恐る水の中に両手を入れる。

げばはりんごちゃんの向かいに座り、

暇を持て余していた。

「どんな感じ?りんごちゃん?」

とげばは聞く。

「…. ちくちくする感じかな」

「へえ〜」

げばは手持ちぶたさである。

「ちくちくってこんな感じか?」

ボールペンでツンツンしてみた。

りんごちゃんは笑った。

最初は腕、そして肩をツンツンした。

「マミーやめてよ。あははは」

おもしろくなったげばは

脇腹をツンツンした。

「こら!マミー!やめなさい!」

何せ相手は両手が使えない。

げばのなすがままである。

そこへ看護婦さんがやってきた。

「まあまあ、声がすると思ったら、

お母さんがいたずらしてたんですか?

普通は子供がお母さんにいたずらするのに、

ここではお母さんの方が

いたずらするんですねえ。

お母さん、

いけませんよ。」

げばは看護婦さんに叱られてしまった。

フィッシュスパの体験

ある日、

りんごちゃんとげばは

ショッピングモールでお買い物をしていた。

そしたら、

ある一角で

面白い店がオープンしていた。

「フィッシュスパ」という。

どんなものかと聞くと、

水槽に小型のピラニアを泳がせ、

そこに足を入れる。

そうすると

ピラニアが一斉に足に集まり、

表面についている

老化した皮膚を食べてくれて、

すべすべの足になるんだそうだ。

何人かが靴下を脱いで

水槽に足を入れていた。

みんなピラニアが

ついばむ刺激を楽しんでいた。

ピラニアに

足の汚れをとってもらうなんて

面白い。

やってみようじゃないの。

げばもお金を払って

スパに加わった。

りんごちゃんの仕返し

げばは、靴下を脱いで、

水槽に足を入れた。

「おおおおお」

小さなピラニアが寄ってきて

足をツンツンし始める。

「これは気持ちいい」

げばは上機嫌でピラニアを眺めていた。

「パシャ!」

前方で音がした。

顔を上げると

ニヤニヤしたりんごちゃんが

携帯のカメラを向けていた。

「こらあ!何するの!」

「マミーがピラニアに食われるところを撮ってるのよ」

げばは慌てて、

「こら!やめなさいって!」

だが、足が水槽にあるので、

身動きが取れない。

りんごちゃんは涼しい顔で

パシャパシャ、シャッターを切りまくる。

「はははは………」

りんごちゃんは

げばの間抜けな姿に大笑い。

全く最近のティーンは

何かというと

写真をとって、SNSにアップするのだ。

古いおばさんはたまったもんじゃない。

ここでげばははたと気がついた。

これはハンドクリニックで

げばがふざけたことに対する

りんごちゃんの仕返しではなかろうか?

まったく

因果応報とはこのことである。

娘は母親に似るものなんだ…..

とげばは思った。

投稿者 geba-

21年の国際結婚にピリオドを打ち、今現在シングルアゲインしています。この生活は思った以上に快適で、NHSの病院で働きながら、漫才みたいな生活を楽しんでいます。女子トーク、イギリス生活、そしてシリアスな人生観を書いていきます。

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