面接の後、誘われて、
ホテルのラウンジで食事した。
「先に行っててくれ。」
面接官はこういって
客室のキーをテーブルに置いた。
麗しのサブリナ
「それで、それで?」
「どうなったんですか?」
女子たちがわいわい騒いで
サブリナ夫人の言葉を待った。
夫人はその時、
若い後輩たちにせがまれ、
彼女の若かりし頃の話をしていたのだ。
すごい美人だ。
スタイルも良く、頭の回転も早い。
そして
暖かいハートも持っていた。
当然ながら
男どものアプローチはすごかった。
仕事の面接に行くと、
面接官が逆に魅了される始末。
そんな彼女は
若かりし日、
貧乏なひとりの青年に恋をする。
彼女ほどの器量なら
もっと
裕福な男を選ぶ
という選択肢もあったはずである。
周囲の思惑をよそに、
ふたりはつつましい結婚をする。
彼はその時、
株のブローカーとして働いてた。
そして次第に
頭角を表し、
あれよあれよというまに
大出世し、
そして
なんと
「富豪」とよばれるほどの大金持ちになる。
サブリナ夫人の教え
サブリナ夫人は
10歳ほど年下のげばを
本当に可愛がってくれた。
自宅に何度もお邪魔させてもらった。
彼女の家は
貴族が所有していた館で
キッチンには
召使いを呼ぶ「呼び鈴」のパネルがあった。
広大な庭の境界線は「海」である。
つまり広い庭をどんどん歩いていくと
ビーチに突き当たるのだ。
文字通り、「プライベートビーチ」である。
彼女はそこで
げばに教えてくれた。
「人前で何かを発表するとき、
それが
論文であれ、音楽であれ、なんであれ、
絶対、口にしてはいけない言葉があるわ。」
「なぜかわかる?」
夫人は聞いた。
女の愛嬌に隠された、「男以上の度胸」
「女は愛嬌、男は度胸」という言葉がある。
しかし、
サブリナ夫人は
自分の外見、「愛嬌」だけに頼る女ではない。
男以上に度胸のある女性だった。
彼女の話は
きちんと要点を
踏まえており、
それでいて
人間的な、
何か暖かいものを感じさせる。
彼女はいう。
「私だって、
人前で話するのは下手よお。」
しかし
ステージに上がれば、
初心者も玄人も、
アマもプロも
関係ない。
どうせなら
「私、初めてなんです。(だから、下手くそでも見逃してね)」
というより、
「私の素晴らしい話、
聴いたあなたは超ラッキー!」
という方が
絶対いい。
彼女の話の中で
げばが好きになった言葉がある。
それは、
世の中には
裕福な男を捕まえて、
そいつに幸せにしてもらおう。
そう考える女が大勢いる。
彼女はそういう女たちのはるか上を行っている。
「私があんたを幸せに導いてあげるわ!」
貧乏だった彼を
大金持ちにのし上げた
幸運の女神のような女性。
秘訣は
男顔負けの
この「度胸」だったのかもしれない……