イギリスは

北海道より緯度が高いのに

暖かいのは

暖流と偏西風の

影響である。

南側は

特に温暖である。

ロンドンも

カンタベリーも

イギリス南部である。

雪が積もるのは

めずらしい。

雪をかぶった砂糖菓子の家

ロンドンを出て少しすると

雪が降ってきた。

「イギリス旅行に雪なんて

ロマンチックねえ」

おのぼりさんの私たち2名は

キャキャはしゃいでいた。

イギリスの田舎にある

砂糖菓子のような可愛い家が

雪の綿帽子を被る風景は

素晴らしく美しい!

バスは北へと進んでいる。

時刻も夜へと進んでいる。

やがて

家々の明かりも消えていった。

深夜になったのだ。

だんだん雪が

激しくなってきた。

家々に降り積もる雪は

「綿帽子」ではなく

「掛け布団」になっていく。

友人が時計を見て、

「大丈夫あと、30分くらいで着くよ。」

と言った。

夜行バスのホラー

その時

突然

激しくバスが揺れた!

そしてバスは

そのまま動かなくなった。

乗客がガヤガヤ騒ぎ始めた。

運転手が

懐中電灯を持って

外に出た。

誰かが運転手に向かって叫んでいる。

乗客たちは口々に

文句を言い始めた。

数分たち、

英語のわからない私たちも

乗客の説明でやっと状況を理解した。

バスの車輪が雪のぬかるみにはまって

出られなくなったのだ。

運転手は

乗客の男たちに

お願いして

バスを押して

ぬかるみから抜け出そうとした。

しかし

雪の深さとバスの重さで

どうしても抜け出せなかった。

これがイギリスの天気だ!

男たちが何度試みても

バスは動かない。

時間は深夜である。

場所は誰も通らぬ田舎道。

あの頃は

携帯電話という

便利なものもなかった。

途方に暮れた

私たちが

肩を落とした

運転手に聞いた。

「一体これからどうするの?

ここをなんとか抜け出せないの?」

運転手は答えた。

「君たちどこからきたんだ?」

「日本からです。」

友人は答えた。

運転手は

「まあ、それなら

お前さんたち、知らないだろうが、

これがイギリスさ。

これがイギリスの天気ってもんだ。

誰も天気には逆らえないんだ。」

「これからどうなるの?」

「どうなるもこうなるも、

吹雪が止んで

救助が来るのを待つしかないだろう。」

「ストラトフォードまであと少しなのに」

と私たちが言うと、

「行けるわけないだろ!動けないのに!

引き返すこともできない!今夜はここで

夜明かしだよ。」

運転手は両手をあげて

「お手上げだ」と言った。

その時、

短髪の1人の青年が

運転手に近寄ってきた。

「わかんねえだろ。

もう一度やってみようじゃねえか。」

「お手上げだって言ったろう。」

運転手はいう。

青年は

「おっさん、

エンジンをふかしてみてくれ。

もう一度やってみよう。」

彼は自分の着ていたジャケットを

かっこよく脱いで

脱線しているタイヤの下に引いた。

そして叫んだ。

「おい!

全員降りてくれ。

みんなで

バスを押すんだ!」

闇夜の中、

ヒーローが現れたのである。

投稿者 geba-

21年の国際結婚にピリオドを打ち、今現在シングルアゲインしています。この生活は思った以上に快適で、NHSの病院で働きながら、漫才みたいな生活を楽しんでいます。女子トーク、イギリス生活、そしてシリアスな人生観を書いていきます。

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