サファリとはスワヒリ語で「旅」を意味します。現在では動物観察を目的とする旅行全般を表すようになりました。特にケニアはサファリを行うのに最適な環境が整っています。自然の中にお邪魔させていただいていることを忘れず、大声を出したり、騒いだりしないようにお願い致します。 (旅行代理店、ケニア現地情報より)
サファリのホテル
ホテルまでの道道で動物を発見すると、シッター2号はそのたびに車を停めてくれた。
「すまないねぇ」と恐縮するげばに、
「いいって、いいって。君はこのために来たんだから。」
結局ホテルに着くまで1時間以上かかってしまう。時間に厳しい日本人なら、ここで「イラッ」とするだろう。でもシッター2号は終始穏やかだった。多分、ほとんどのツーリストもこんな感じなのだろうか。
ホテルの庭にはテラスのようなものがあり、そこがレセプションエリアだった。チェックインをすませると、派手なマサイ族衣装のスタッフが横からやってきてついてこいという。腰には短剣というかナイフのようなものをぶら下げている。ふいに猛獣がきてもオレが狩ってやるっといった「いでたち」だった。彼が部屋までの案内兼ボディーガード役らしい。部屋は建物の中ではなく敷地内に作られたキャンプである。自慢じゃないが、私がキャンプをしたのは小学5年生のとき。だから外で寝るのって半世紀ぶりである。キャンプというからには日本で体験した、ちゃっちいテントを思い描いていた。案内されたキャンプ(部屋)は私の想像をはるかに超えた贅沢なキャンプだった。テントはファスナーで開け閉めするのだが錠前付きである。つまりこれが部屋の鍵だ。
部屋の鍵には懐中電灯が付いていた。日が落ちた夜の道は真っ暗になるので非常に危なく、道にも迷う。だから懐中電灯は必須である。それでも迷子になる人はいるらしく、夜中や早朝、巡回するスタッフもいた。わたしも迷ったひとりだ。(スタッフさんありがとう。)
さて、私の豪華なキャンプ (ホテルの部屋)の話をしよう。
広さは10畳ほどの部屋が二つ (2つの部屋がすっぽりテントで覆われている!)ひとつはタイル張りの床にバス、トイレ、シャワー、ふたつの洗面台。もう一つは寝室兼リビングの部屋で木の床に絨毯が敷かれている。豪華な天蓋つきのダブルベッド、シングルベッド、クローゼット、応接セットなどが置かれ、コンセントもあった。ベッドにダイブするとふかふかで気持ちいい。
サファリの宿泊施設はもともとヨーロッパ人が自分たちのために造ったのだそうだ。大自然の中で快適にサファリ旅行を楽しもうという富裕層たちの宿である。なるほど雰囲気がなんとなく1920年代の古きヨーロッパって感じだ。
ベッドにはネットが吊るされ、日本の蚊帳のように虫がはいってこれないようになっていた。そういえば、ケニアで蚊に刺された場合、マラリアとかのリスクがあると聞いた。旅行案内にも虫除けスプレーを準備するよういわれたっけ。お湯は出にくいのでシャワーを使う時は数分まつようにいわれた。試しに水を浴槽に溜めてみると金属の混じったような赤い水がでた。なるほど洗面台に置かれていたウォーターボトルは飲むためというより歯磨き用と言われた意味がわかった。ケニアの水道水は口にふくんではいけない。

サファリゲーム初体験
さて荷物を部屋において昼食を食べていると、例のシッター2号がやってきた。彼はドライブと案内、両方するらしい。旅のしおりではドライバーと案内人がついて、それにジープは何組かとの共有ときいてたが、シッター2号の客は私一人らしい。完全に貸切状態である。
「さあ、お昼終わったらでかけようか」
サファリゲームの始まりである。
案内には「動物は早朝と夕方活動するのでサファリゲームはその時間帯におこなわれる」と書いてあった。
ドンドコドンドコ
岩道を走り、橋のない川をかまわず突っ切り、サファリ国立公園にやってきた。あぜ道のような何にもない場所には動物はほとんどいなかった。まあサファリといっても自然任せなので、こういう日もあるのだろう。聞くとその場所は普段はライオンとかがいる猛獣区域で、夜は大変危険なのだそうだ。そのうち雨も降ってきた。なんか収穫のない日だった。と少しがっかりして猛獣区域をでると、いきなりたくさんの草食動物に遭遇した。シマウマなどは車道ギリギリまで寄ってきて、手を伸ばせば触れそうだった。像とかキリンもかなり至近距離でみることができた。マントヒヒは車道を横切っている。ああ、サファリにきたんだ!とげばは実感した。
ホテルに戻ったら日は落ちて真っ暗になっていた。ふいにレセプションで声をかけられる。声をかけた男は明日のバルーン(気球)体験の旅行代理店のスタッフだった。彼は明日の説明を一通り行い、朝6時にピックアップするから遅れないように念を押して帰って行った。
ホリデーというのは2通りあって、ビーチで何もせずただダラダラとリラックスして過ごすリゾートホリデーと、やったことのない新しい発見をワクワクして行うアドベンチャーホリデーがある。このサファリホリデーはもちろん後者のアドベンチャーである。よって、早朝出発などはマストである。考えてみるとホリデー初日から4時、5時起きが続いている。明日も5時起きである。
早起きが続いたので夜は早々と眠くなる。我が豪華キャンプにもどり、豪奢なベッドに潜ると昔懐かし「湯たんぽ」がはいっていた。なるほどこの部屋にはいっさいの暖房設備はおいてない。ヒーターなどをいれて火災などの事故がおこるのをおそれたのだろう。ここケニアは昼は暑いけれど、夜は大変寒い。ましてやキャンプというと外で寝るわけだから、部屋は豪華でもとても寒いのだ。だからこの湯たんぽの存在は大変ありがたかった。後日談だが、この湯たんぽのお礼に心付けを置いていった翌日は湯たんぽは2つに増えていた。
げばは湯たんぽで足をあたためながらゆっくり眠りについた。
明日はいよいよバルーン体験である。