荷物は最小限にしてくださあい。でないとサファリ行き国内線にのれなくなりますぅ。
という旅行代理店の注意書きにしたがい、CAも使ってるという、手荷物扱いスーツケースと通勤用のトートバッグだけでケニアの国際空港ナイロビに到着した。
夜のナイロビ国際空港
ヒースロー空港から約9時間の空の旅を終え、アフリカ、ケニアの首都、ナイロビに到着した。
えっ国際空港?
っていうほど小さな空港だった。ヒースロー空港や羽田空港とくらべてはいけない。
…..でも
はっきりいって、日本の地方空港より、小さな空港だった。
窓口はたしか4つくらいでケニアのパスポート、もしくは滞在ビザ所有者専用の窓口は3つ。しかもガラガラだった。外国人専用の窓口は一つしかなく、当然ながらそこには長い列が続いていた。
機転をきかせてスタッフのひとりが、「いいからあっちのケニアパスポートの方に並んで」と教えてくれた。列を作るのに慣れている白人のイギリス人は黙々と列に並んでいた。げばは知らん顔してさっさとケニアパスポート窓口に移動した。順番がきてパスポート係員は私のパスポートを広げて機械でスキャンし、全ての指も広げてスキャンしろという。指紋をとっていたのだ。
いままでにないパスポートコントロールである。長い列が一向に進まないわけだ。ケニア滞在用のeTAビザを提示しやっと解放された。
空港をでると、暗がりのなか、わらわらとたくさんの人がプラカードをもってたっていた。ホテルからの迎えの群衆である。自分の名前の書かれたプラカードはなかなかみつからない。だんだん青くなってきた。
私をみて、タクシーの運ちゃんが「どこのホテルなの?送るよ。」とかいって勧誘してくる。困ったな。と思っていると、一人の男が近づいてきた。彼のプラカードには私の名前が書いてある。
私の顔がパあーと明るくなった。自分の顔が明るくなったって?鏡をみなくてもわかる。赤ちゃんが見知らぬ人に囲まれて、やっと自分のベビーシッターをみつけた!助かったぁ!ってそんな心境である。
いや赤ちゃんの心境なんか知らんが、多分こんな感じなんだろう。
彼を私はベビーシッター1号とよぶことにした。
1号は私の小さなスーツケースをかかえ、駐車していた車まで案内した。空の旅はどうだった?と聞いてくる。げばは短く「疲れた。お腹すいた。」とだけいった。1号は振り返って「えっっ?機内で食べなかったの?」げばが飛行機の中では小さなスナックだけが夕食代わりに出されたこと。パスポートコントロールに時間がかかり気がついたらもう深夜になってしまったことを話した。だから空腹でたまらないと告げた。1号は「そうか。なにか喰うもの?ショッピングモールによってあげようか?」と聞いてくれた。
でも当のげばは還暦すぎたおばさんである。ただでさえ代謝が衰えているのに深夜に食事なんかしたら太るに決まってる!
そう思って1号の好意を遠慮した。車は1時間弱走り続けた。そしてすごく贅沢なホテルに到着した。裕福なケニア人が利用するのであろう贅沢な結婚式イベントパンフレットがいっぱいおいてあった。レセプションでチェックインすると、彼女は部屋までエスコートしてくれた。彼女がカードキーを使って部屋を開けようとする。でもカードキーはエラーがでてドアが開かない。彼女は「すぐ別のカードキーをつくってもってくるわ」私を部屋の前に残しカードキーを取り替えに行った。こんな不具合ケニアでは日常茶飯事なのであろう。やがて彼女は優雅に腰をふりながら新しいカードをもってきて、ゆっくりとドアを開けてくれた。日本人のスタッフなら手違いをあやまり、あたふたしてカードをもってくるだろう。お国柄の違いなのだろう。
さて、部屋に入ったげばがまずすべきこと。
それはコーヒーをいれることでも、テレビをつけることでもない。
esimを稼働させることである。
この時代、WIFIなしでどうやって生活できよう?
カチャカチャスマホをいじってみること半時間。しかしなんどやっても稼働しない。
これだからおばさんとITは相容れないのだよ!
けっきょく小一時間スマホと格闘して、げばは悟った。
今私が必要としているのは
esimを稼働させることよりも明日に備えて休むことなのだ。
げばは贅沢なバスにお湯をはった。
これから湯船につかるなんて今後ないだろうからな
….ふふふ
最近は水道代、光熱費、ガス代がめっちゃ高くなった。
ゆっくり湯船につかるなんて贅沢なのである。在英日本人からしたら天国ではなかろうか?
なんたって温泉の国からきたんですもの。
そうやってしばしの「なんちゃって温泉」を堪能した。
ゆっくりリラックスできたげばは柔らかいキングサイズのベッドに潜り込んだ。
体が大の字になっても余裕のこのベッド。もちろん二人用である。
思いっきり体を伸ばすのは、エコノミーシートで不自然な体勢で仮眠を強いられた体が「リベンジ」を欲しているのだ。
そうよ。ホリデーはこうでなくちゃあ。
ぜいたくな気分に浸りつつ、ちょっとの不安を抱え、げばは眠りについた。
いざ出陣、旅はこれから始まる
おばさんの朝は早い。
お休みの日でも体は5時になると目が覚めてしまう。目覚めてしばらくすると猛烈な空腹感が蘇った。なにしろ昨夜は遅くついて疲労と空腹の中眠っちゃったからな。朝食は6時からといってたな。よし朝食は好きなものを食べるぞおと誓う。
6時がきた。
こんな朝早くから食堂には誰もいないと思っていたが、すでに席についてコーヒーを飲んでいた紳士がいた。それでもげばとその紳士だけしかいなかった。贅沢な食堂はバイキング形式だった。ベーコン、ソーセージ、マッシュルーム、卵料理、トーストなどのイングリッシュブレックファーストはもちろん、ハムやチーズ、クロワッサン、デーニッシュなどの欧州スタイルのコンチネンタル。そしてご当地のケニア風料理、米、魚料理、肉料理などが並んでいた。そして食後のケーキまで。こんなの夕食レベルじゃない?と思うような献立である。
最近げばのダイエットは朝しっかり食べて夜は軽めにするのがマイブームである。つまり朝はダイエット解禁の時間なのだ。
見るのも飽きたイングリッシュブレックファーストには目もくれず、夕食レベル、ケニア料理をたくさんいただいた。とくに炊き込みご飯風お米には感動しておかわりまでいただいた。大満足な朝食であった。
8時になると昨夜のベビーシッター1号が迎えにきた。彼の任務はナイロビ空港からのピックアップ、ホテルまでの送迎、そして今日、ホテルでのピックアップ、そしてマサイマラにいく国内線の手続きをする。手取り足取りのサービスはまさしくベビーシッターである。
私たちがホテルを後にしようとした時、日本人グループがホテルにやってきた。賑やかで、私の姿を見て、陽気に手を振ってくれた。シッター1号が「あれは1日遅れのグループなのだ」といった。「今日のグループはわたしひとりなのか」ときいたら、「そうだ」という。げばは悲しくなった。私もあの楽しそうなグループに混じりたい。慣れない異国で一人旅するのは気楽な反面、ストレスもある。誰にも頼れないからだ。思い出して、「そうだ!eSimの設定がうまくいかなかったのだけど、あなたは詳しいか?」と尋ねてみた。シッター1号はしばし黙っていた。
….詳しくないらしい。
けれど彼は親切だった。空港に着くと、IT関係のお店に寄ってあげるといってくれた。
車をそれらしきオフィスの前に停めて、なにやら人と話していたが、すぐに帰ってきた。お店はまだ開かないらしい。私のフライトの時間があるため、待つことができない。ソーリーと言ってきた。実直なシッター1号である。
空港の搭乗ゲートに着く。
そこは空港というよりバスターミナルのような風体だった。でもバスの代わりに飛行機が止まっているので、まあやや広い感じか?荷物検査が一応行われる。ブラスチックの容器のうえにスーツケースやら携帯やらをおいてスキャンされてベルトコンベアで出てくる、そう空港特有のセキュリティチェックというやつである。お馴染みのやつである。
しかしなにごとも慣れないと「もたつく」のが「おばさん」である。
シッター1号はあれこれ指示をしてくれる。彼はげばを座らせ、「それでは搭乗手続きをしてくるからe-ticketをだして」といってくれた。テキパキと仕事する彼。私もカバンの中に手にいれてe-ticketを出そうとした。
えっ!
ない!
うっそ!
全てのポケットの中を調べた!
ない!
どこにもないぃぃぃぃぃ!
シッター1号がすぐにセキュリティーチェックにとって返してくれた。
数秒前のことである。
絶対あるはずである。
しばらくしてシッター1号は肩を落として帰ってきた。
「セキュリティーのひとがいうには確かに誰かがe-ticketを忘れていた。しかし我々も忙しくてそのままにしていて。そのうちその紙はどこかに行ってしまった。探してもないというなら、誰かがもっていったんだろう。」
…..げばは青くなった。