初恋の甘酸っぱいお話

リトルロマンス(A Little Romance)という古い映画をご存知だろうか?

1979年の公開で、ダイアン・レインのデビュー作にもなった映画だ。

この映画は中学生ティーンの心をつかみ、世界的に大ヒットした。

サンセットキスの伝説ー

(ベネチアにある「ためいき橋」の下で

日没の瞬間にキスした恋人たちは

永遠の愛を手にする)

を信じて

幼い男の子と女の子が旅をする物語である。

「詐欺師が彼らを誘拐したのだ」と思った警察は

ふたりを保護しようと躍起になって追跡する。

一方、ふたりはなんとしても日没時に

ためいき橋でキスする!

それまでは捕まらない!

と決め、

イタリアの小道を縫うように走りまわった。

夕刻、

やっと彼らはゴンドラの船着場に辿り着く。

両側を古い街に囲まれた水の上を

ゴンドラは滑るように進んでゆく。

やがてゆっくりと「ためいき橋」に近づく。

空が赤く染まり、

太陽がまさに

沈んでゆく瞬間である。

カメラはためいき橋を下から撮り、

橋が空を隠した瞬間、

2人は唇を合わせるのだ。

同じ年頃だったげばは

初恋の

甘酸っぱく、

切ない

純なお話に感動したものであった。

ヴェニスに行くにあたって、

ぜひこのためいき橋を見るべきだ!

そう思ったのは旅行が終わって

これを執筆している「今」、

旅行を終えた4週間後である。

………おしいことをした。

私のバカ

バカ。バカ。バカあ!

旅行中はあの伝説の橋が

「ためいき橋」という名前だったことすら忘れていた。

…….無理もない。

あの甘酸っぱい感動から40年もたっている。

でも、なんかな

橋の下でキッスしたら永遠の愛だあ?!

ヴェロナの「ロミオとジュリエット」といい、

ヴェニスの「サンセットキス伝説」といい、

イタリアはホント

アモーレの国である。

ヴェニスに向けて出発

ホテルから駅まで歩くこと10分、

ここでヴェニスまでのチケットを買った。

約1時間の旅である。

時刻表と行き先を見ていたルイーザがそばに寄ってきてささやいた。

「ねえ、げば、ミラノに行きたくない?」

「えっなんで?」

「ミラノってさあ、こっから1時間なんだって。」

私たちのいるヴェロナはヴェニスとミラノのちょうど中間点らしいのだ。

「ミラノは行ったことあるから行かない。」と答えた。

「ふうーん、あっそっ」ルイーザはそっけなく答えた。

「ミラノに行くつもりなの?」

「こんなに近いなら行くべきじゃない?」

(かんべんしてくれ)

ただの冗談だろとげばはその時思った。

やがて列車の発着時刻になり、

私たちは列車に乗り込んだ。

綺麗な車内は2階席もあり、

好奇心旺盛な私たちは2階席に上がっていった。

コンセントも各席に付いていて、スマホ充電もできる。

のんびり車窓を眺めていると、

イタリアの田園風景が延々と広がる。

女がおしゃべりしていたら、1時間なんてすぐである。

到着掲示板にもうすぐヴェニスに到着するとお知らせがあった。

「ルー、私トイレ行ってくるよ」

乗り込む時、この列車にトイレがあるのを確認しておいたのだ。

2階から降りて下の車両のトイレを探したが、なかなか見つからない。

やっと見つけたら、誰かが入っていて使用中だった。

やっとトイレを済ませて席に戻ろうとしたら、

「!」

どこが自分の座席かわからないのだ。

車両番号もなく、トイレを探して、結構歩いたし、

しかも座席は2階席。

2階席への入り口は無数にあって、

しかも全部同じような入り口なので、

げばは迷路のように階段を登っては、降りるを繰り返した。

やがて列車は止まった!

ヴェニスに着いたのだ!

げばは青くなった。

運よく携帯を持っていたので、

急いで電話した。

「ハロー!ハロー!あっルー?!」

「迷子になっちゃったよう!」

「座席に戻れないから、私のカバン持ってプラットホームに出てくれる?」

「プラットホームで会おう!」

私がプラットホームに出ると、

すぐ横からルイーザもでてきた。

(助かったよう!)

やれやれ

50代にして列車で迷子になろうとは。

あきれた顔のルイーザがいった。

「私もトイレ行ってくるから今度はあんたが私のカバン見ててね。」

彼女は駅のトイレへと消えた。

列車トイレの、迷子リスクとスリル&サスペンスがない分、

駅のトイレの方が絶対安全である。

ルイーザ賢明だよね。とか思っていたら、

彼女はぷんぷん怒って帰ってきた。

「駅のトイレってさ、20セントも使用料とるのよ!

まったく、損しちゃったわ!私も列車の中で済ましときゃ良かった!」

……..どうやら

私の方が賢明だったみたいである。

投稿者 geba-

21年の国際結婚にピリオドを打ち、今現在シングルアゲインしています。この生活は思った以上に快適で、NHSの病院で働きながら、漫才みたいな生活を楽しんでいます。女子トーク、イギリス生活、そしてシリアスな人生観を書いていきます。

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